人の指とロボットの指は、長さも曲がり方も同じではない。人の動きをそのまま写しても、物に触れる位置がずれてしまうことがある。Haozhe Zhang氏らが発表したTouchBridgeは、人が身につける記録装置とロボット側の装置を組み合わせ、見え方だけでなく、指先がどこに触れたかも記録する方法だ。
中心となるTac-Retargetという仕組みは、指先が触れた部分の位置関係を合わせて、人の作業例をロボットの動きに変換する。研究者によれば、この変換のために物の正確な三次元模型や位置の推定、物理シミュレーション[1]を用意する必要はない。変換した映像と動作のデータを使い、画像や指示から動きを選ぶモデルを追加学習させる。
本物の物を使う四つの課題では、人の作業例を変換したデータだけで学習した場合の平均成功率は72.5%だった。ロボットを直接操作して集めた同じ数の例では77.5%だったが、人の作業例は七倍の速さで集められた。ただし、これは決まった課題と装置での結果であり、どんな形の手や物にもそのまま使えると証明されたわけではない。
技術者が注目すべきなのは、良い数字だけでなく再現できる条件だ。装置の構成、学習データ、評価の手順、制御の速さ、実験を止める条件をそろえなければ、公平な比較は難しい。平均値が良くても、まれに起こる失敗を見落としてはいけない。計算に使う時間や試行回数も同じ条件で比べる必要がある。別の研究者が別の装置で再現するまでは、発表された改善は研究者が選んだ実験条件の中での証拠として読むべきだ。 作業例を速く集められても、実際の物にきちんと触れられるかは確認が必要だ。成功率の差は記録が七倍速いという利点と一緒に考えたい。 研究の比較では、使った道具や試した回数が違うだけで結果が変わることがある。平均の成功率が高くても、少ない回数で大きな失敗が起きないか、別の場所でも同じように動くかを調べたい。発表された数字をそのまま製品の性能と考えず、条件を読んで判断することが大切だ。


